電子化で収入印紙は不要? ~契約書や領収書をデータでやり取りする際の印紙税の取り扱い~
契約書や領収書など、金銭のやり取りが発生する文書には、収入印紙を貼る必要があるケースがあります。これは「印紙税法」に基づき、課税文書を作成した際に印紙税を納める義務があるためです。
では、電子データでやり取りした場合はどうなるのでしょうか?
収入印紙とは?
収入印紙とは、税金や手数料の支払いの証明となる印刷物(紙片)のことで、主に契約書・領収書・請負契約書などの「課税文書」に貼付することで、印紙税を納めます。
印紙税が課されるのは「紙で交付」した場合
印紙税法第3条では、課税文書を「作成」した者に印紙税の納税義務があるとされています。そして、「作成」の定義は、国税庁が示す「印紙税基本通達」によって具体的に示されています。
その中でポイントになるのが「印紙税基本通達第44条」。
ここでは、課税文書を「相手に交付する目的で作成された場合」に印紙税が発生するとされています。
つまり、紙で作成し、相手に渡した場合に「交付」にあたるため印紙税がかかるのですが、電子データとして送信するだけであれば、「交付」には該当しないとされており、印紙税の課税対象外となります。
電子化された契約書・領収書は印紙不要!
この通達により、PDF等の電子データで契約書や領収書を送付・共有する場合には、印紙を貼る必要がなく、コスト削減にもつながります。
ただし、電子化できない契約書もあるので注意!
以下のような契約書については、電子化による印紙税の回避ができないケースがあります。たとえば:
・任意後見契約書
・事業用定期借地権設定の契約書
・農地の賃貸借契約書
・公正証書として作成される契約書
これらは法律上、書面または特定の形式で作成することが求められるため、電子化が認められない、または印紙税の対象外とならない場合があります。
まとめ
契約書や領収書を電子データでやり取りすることで、印紙税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、すべての文書が電子化できるわけではない点には注意が必要です。適切な形式で文書を作成しつつ、業務の効率化とコスト削減を両立させていきたいですね。
〔参考〕
印紙税法、国税庁「印紙税基本通達」
大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4
企業第五課 監査担当 田中伸子