電気通信利用役務の提供を受ける場合の消費税の取扱い
皆さんは電気通信利用役務の提供という言葉をご存じでしょうか。
電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含みます。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話等の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除きます。)であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいいます。
電気通信利用役務の提供には、事業者向け電気通信利用役務の提供と、それ以外の電気通信利用役務の提供(以後「消費者向け電気通信利用役務の提供」とする。)があります。
事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいい、例えば、次のものが該当します。
- インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
- 役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの
この事業者向け電気通信利用役務の提供に係る消費税の取扱いとしては、以下のように区分されます。(前提として、電気通信利用役務の提供を受ける事業者は国内事業者とします。)
- 電気通信利用役務の提供を行う者が国外事業者に該当する場合(適格請求書発行事業者の登録の有無は関係なし)
→電気通信利用役務の提供を受ける者が申告納税義務者となるリバースチャージ方式が適用されます。(ただし、課税売上割合が95%以上である事業者については経過措置により消費税法上当該取引はなかったものとみなされます。)
- 電気通信利用役務の提供を行う者が国内事業者に該当する場合
→電気通信利用役務の提供を行う者が申告納税義務者となり、一般の課税取引と同様に取扱います。
次に消費者向け電気通信利用役務の提供に係る消費税の取扱いとしては、以下のように区分されます。
- 消費者向け電気通信利用役務の提供を行う者が国外事業者に該当する場合(当該国外事業者において適格請求書発行事業者の登録を受けている場合)
→電気通信利用役務の提供を行う事業者が申告納税義務者となり、電気通信利用役務の提供を行う者が適格請求書発行事業者に該当するため、電気通信利用役務の提供を受ける者においては、仕入税額控除が通常通り適用されます。
- 消費者向け電気通信利用役務の提供を行う者が国外事業者に該当する場合(当該国外事業者において適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合)
→電気通信利用役務の提供を行う事業者が申告納税義務者となるが、電気通信利用役務の提供を行う者が適格請求書発行事業者に該当しないため、電気通信利用役務の提供を受ける者においては、仕入税額控除の規定は適用されません。(インボイス制度における経過措置のうち、8割(5割)控除の特例は対象とならず、少額特例については対象となる点に注意が必要です。)
また、特定プラットフォーム事業者を介して行われる、消費者向け電気通信利用役務の提供については、特定プラットフォーム事業者が電気通信利用役務の提供を行うものとみなされるため、特定プラットフォーム事業者の適格請求書をもって仕入税額控除の規定が適用されます。(実際に電気通信利用役務の提供を行う者について適格請求書発行事業者の登録の有無に関係なく適用されます。)
現在公表されている特定プラットフォーム事業者:iTunes株式会社、アマゾンウェブサービス合同会社、グーグルアジアパシフィックプライベートリミテッド、任天堂株式会社
- 消費者向け電気通信利用役務の提供を行う者が国内事業者に該当する場合
→電気通信利用役務の提供を行う者が申告納税義務者となり、一般の課税取引と同様に取扱います。
このように国境を越えて行われる電気通信利用役務の提供については複雑な部分があります。特にインターネットが発達した現代社会では電気通信利用役務の提供を受けることも少なくないのではないか存じます。これらの消費税の取扱いについてご不明点等ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。
参考: 国税庁「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について」
国税庁「消費税のプラットフォーム課税について」
大阪の税理士 杉本会計事務所
大阪市東住吉区杭全3-4-4
企業第二課 監査担当 大西純平