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コラム

税務・会計
2025.10.23

居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の取扱い

はじめに

事業者が賃貸事業を行う場合において、居住用としての家賃は消費税法上「非課税取引」とされており、入居者が支払う賃料には消費税が課されず、貸手側が消費税を受け取ることはありません。一方で、建物を建設したり購入したりする際には、支払う代金に消費税が含まれます。本来、事業者は支払った消費税を「仕入税額控除」として納めるべき消費税額から差し引くことができますが、居住用賃貸として運用される建物の取得時に支払った消費税は「仕入税額控除」が認められません。本コラムでは、このような居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の取扱いについて解説します。

 

居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限

 令和2年度税制改正により、令和2101日以後に行う居住用賃貸建物の取得については仕入税額控除の適用が制限されました。ここでいう居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものをいいます。

 

居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整

 上記の適用を受けた「居住用賃貸建物」について、次のいずれかに該当する場合には、制限された仕入控除税額を調整することとされました。

 

  • 第三年度の課税期間の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に課税賃貸用に供した場合

→調整計算をした消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算

 

  • その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合

→調整計算をした消費税額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算

 

居住用賃貸建物の判定

 居住用賃貸建物の判定基準には「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とありますが、例えば、建物の全てが店舗等の事業用施設であるなどの建物の設備等の状況や、契約書などの書類等から住宅の貸付けの用に供しないことが客観的にみて明らかな建物は、居住用賃貸建物には該当せず、その課税仕入れ等の税額は仕入税額控除の対象となります。

 また、従業員から使用料を徴収する社宅や従業員寮は、仕入税額控除の対象とはなりませんが、従業員から使用料を徴収せず、無償で貸し付けることがその建物を取得する時点で客観的に明らかな社宅や従業員寮については、居住用賃貸建物には該当せず、仕入税額控除の対象となります。

 

おわりに

 居住用賃貸建物に関する消費税の取扱いは、改正から数年が経った現在も関心が寄せられており、建物の用途や契約内容によって控除や調整の可否が異なる複雑なものです。判断を誤ると、実務上で大きな影響を及ぼしかねないため、制度の内容を正しく理解し、適切に対応することが重要です。

不動産事業を行っている方でご相談をお持ちの方や、これから賃貸事業を始めることをお考えの方は、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。

 

参照

国税庁

「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi_kojin/r02/pdf/01-13.pdf

 

「消費税法改正のお知らせ」(令和24月)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf

 

税務研究会

「週刊税務通信No.3863」

 

大阪の税理士 
大阪市東住吉区杭全3-4-4

税理士法人 悠久 杉本会計事務所

企業第二課 監査担当 東 寛太郎

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