扶養控除について
- はじめに
令和7年も残りわずかとなり、サラリーマンなどの給与所得者の方にとっては「年末調整」の時期が近づいてきました。年末調整とは、1年間に支払われた給与や賞与に対して、あらかじめ源泉徴収されていた所得税の金額を精算する手続きのことです。給与から毎月天引きされている所得税は、あくまで概算であり、年末にその人の年間所得や各種控除を正しく反映して、最終的な税額を確定させます。本コラムでは、この年末調整で適用される各種控除の中でも対象者が多い「扶養控除」をご紹介します。扶養控除とは、生計を一にする家族を扶養している場合に、その生活費負担を考慮して、納税者の所得から一定額を差し引くことで税負担を軽減する制度です。ただし、「誰を扶養親族として申告できるのか」「親族に所得がある場合はどうなるのか」など、判断が難しいケースも多く見られます。本コラムでは、そんな扶養控除の基本的な制度や適用の要件、控除の種類や控除額などをわかりやすく解説します。年末調整の時期を迎える前に、正しく整理しておきましょう。
- 扶養親族と控除対象扶養親族
所得者本人が、所得が一定額以下の子や親などと生計を一にしている場合には、扶養控除を適用できます。次の要件のすべてを満たす人を扶養親族といい、扶養親族のうち年齢16歳以上の人を扶養控除の対象となる控除対象扶養親族といいます。
・扶養親族の要件
- 所得者本人の6親等内の血族又は3親等内の姻族であること
- 所得者本人と生計を一にしていること
- 合計所得金額が58万円以下であること(親族の収入が給与のみの場合は123万円以下)
- 扶養親族等の判定の時期
扶養親族をはじめとする各種控除の対象になるかどうかは、その年の12月31日の現況で判定します。年の中途で所得者本人又は配偶者や親族が死亡した場合には死亡のときの現況で判定します。
- 扶養控除額
扶養控除額は、次のとおり控除対象扶養親族の年齢に応じて定められています。
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控除対象扶養親族 |
扶養控除額 |
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一般の控除対象扶養親族 (16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満) |
38万円 |
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特定扶養親族(19歳以上23歳未満) |
63万円 |
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老人扶養親族(70歳以上) |
48万円 |
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同居老親等に該当する場合 |
58万円 |
※同居老親等とは、老人扶養親族のうち、所得者本人又はその配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、所得者本人又はその配偶者と同居している人をいいます。
- おわりに
扶養控除は、所得税の計算において多くの方が関係する基本的な控除のひとつです。しかし、適用の可否を判断するには、扶養の対象となる親族の範囲や所得の基準、判定の時期などの細かな要件を正しく理解しておく必要があります。
本コラムで解説した扶養控除に限らず、税金の計算に必要な知識は数多く存在します。税務についてのお悩みやご相談をお持ちの方が居られましたら、ぜひ弊所までお気軽にご連絡ください。
参照
・株式会社 清文社
「Q&A 令和7年分 年末調整の実務ガイド」. 執筆:篠藤敦子(2025)
大阪の税理士
大阪市東住吉区杭全3-4-4
税理士法人 悠久 杉本会計事務所
企業第二課 監査担当 東寛太郎
